【書評】舟を編む(三浦しをん)に見る、本屋大賞は伊達じゃない

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舟を編む。

今思えば、本屋大賞受賞作。辞書作りの話っていうのはなんとなくは知っていたけど、パラパラ見た印象はビブリア古書堂みたいなラノベ的な感じかなぁと思ってた。

辞書の編集って、辞書だし国語だからさぞかし文系的な仕事かと思っていたら、全然理系。情緒的、感情的な表現の話ではなく、いかに必要最小限の文字数で言葉を定義できるかが勝負。

例えば、【西行】のページでは、ダメな定義が、

平安時代から鎌倉時代にかけて活躍した歌人にして僧侶。出家前の名前は佐藤義清。(以下略)

一方で、目指すべき定義は、

平安末・鎌倉初期の歌人、僧。法名は円位、俗名は佐藤義清。

となる。

このように、職人気質というか、オタクというか、マニアの人たちが、没頭しながら辞書を編集する様子が描かれている。

ただ、登場人物全部が全部、職人気質の人ではない。職人気質的に没頭する対象がない、ただの一般人も良い味付けとして出てくる。

職人気質的に没頭する彼らを変人と思いながらも、うらやましいと思う一般人。そんな一般人が、「一般人である」ということを武器に辞書作りの中で自分の存在意義を見いだす様子に、一般人の読者が感情移入ができるようになっているのも絶妙。

更には、登場人物たちの織り成す恋愛エピソードが、これまた、爽やかで清々しい。ちなみに、この小説には悪い人が一人も出てこない、というのもあってか、辞書編集っていう、暗くてジメジメしたイメージの作業について書かれていても、どこか爽やかな印象を受ける。

章によって主観となる人物が変わっているのも、変化があって飽きさせない。

また、時間軸的には、結構なスピードで展開していて、下手な作者だと、変にシリーズものとかにしそうだけど、冗長な部分はカットして一冊にまとめてるのもグッド。

これ読めば、辞書という書物に対する見方が変わりますわ。改めて、辞書ってスゴイというか。辞書、読みたくなる。誰かが、もし無人島に一つだけモノを持って行けるとするならば百科事典、と答えていたのを見たことがあるけど、その気持ちがちょっとわかるかも。

さすが、本屋大賞!

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