第160回芥川賞受賞作のニムロッド(上田岳弘)。
今ドキ話題の仮想通貨とか近未来的なAIと人類との共生?みたいなことを主題としながら、出生前検査問題なんかも織り交ぜながら、割と軽いタッチで展開されていくストーリー。
欲望・欲求のままにつき動くのも人間。欲求が満たされることにむなしさを感じるのも人間。
それでも人と人はつながりを求める。
人が人である根源は何なのか?
そんな哲学的な問いを片隅におきながら、別にそれに答えを出そうとするわけでもなく、あれやこれやと近未来を思考したプロセスが軽いタッチで描かれている感じでしょうか。
ハリウッドのよくできたエンターテイメントのプロットっていうのは、
世界とか宇宙規模のスケールのストーリーと、恋愛とか家族とかっていうミクロなストーリーが同時並行的に進む
ってよく言われたりもするけど、本作もまさにそんな感じですね。
劇中劇よろしく、小説中小説の形で進む近未来のAIがもたらす社会ストーリーと、サーバーメンテナンス系IT企業に勤める合理主義的サラリーマンと訳ありの外資系バリバリキャリアウーマンとの恋愛ストーリーが、仮想通貨を共通テーマとしてオーバーラップしながら進行していく感じでしょうか。
もう一つの芥川賞、1R1分34秒(町屋良平)。。。
ボクサーの日常の生活、アルバイトあり、恋愛あり、トレーナーとのマンツーマンあり、、を精神状態まで精細に描いた作品だけど、
最初はボクシングの技術的なことまで言語化されていて興味が惹かれたけど、読み進めるうちにだんだんダルイくなってくる感じかな。しつこいのよね、描写が。まぁ本当に心理状態を言語化したらそうなるのかもしれないけど。やっぱりそこはフィクションなんだから、グイグイ読ませてほしかったかなぁと。
とはいえ、はじめの一歩を読んでいれば画が頭に浮かぶはずだから読みやすいかと思います。
ニムロッドと1R1分34秒。
とりえず、読んでください!
文藝春秋だと、松本人志と笑福亭鶴瓶の対談もあり、横浜DNAベイスターズの主砲、いや日本の主砲筒香嘉智の「金属バットと勝利至上主義が野球少年を潰す」も掲載されて900円なので、損はしません笑。