「知らぬが仏」の逆なこと、言ってみれば「言うが鬼」ということってあります。
うちのおかんはデリカシーがありません。
窓でもシャッターでも、親の仇か〜いうくらい、ビッシャーンっ!って思いっきり閉めます。近所トラブルなんじゃそらです。 またスーパーに行くと必ずといっていいくらい、レジ終わりの袋つめのところにある袋をクルクルクルクル何枚も引っ張って、何食わぬ顔で持って帰ります。軽犯罪です。
なんなら、レストランで席に置いてあるつまようじを大量に持って帰ったりします。中犯罪です。
そんなおかんは、当然なにか話すときも一言多いのですが、どうでもいい独り言ならまだしも、ちょっとネガティブな一言を放つ時があるんです。
例えば、おかんは、寿司の穴子があんまり好きではありません。
というか嫌いです。 その理由は、「泥臭いから」らしいです。
味覚みたいなものは人それぞれやから良いんです。
それを胸の奥にしまい、自分は食べなければ、それで済む問題です。
でも、おかんはそれだけでは飽きたりません。 自分が食べたくない穴子の寿司を他人が食べているのが許せないのでしょうか。
例えば一緒にお寿司を食べに行っていて、僕たちが穴子のお寿司を頼むと、
「え、穴子?おいしいん?」と聞いてきます。
いつもの件なので無視して流していると、 「ちょっと、一口だけちょうだい」と言ってきます。
アッシ的には会計を出してもらう手前、まぁ一口くらいええかぁと思ってあげます。 で、食べるや否や 「あかん、やっぱり生臭いわ〜」
いやいやいやいやいや、それ、言う必要ある?
それを聞くことで、そんなことはない、穴子はうまいんや〜と思っていても、 何かこれは生臭いのか?という疑念が生じてしまい、美味しい穴子も美味しくいただけなくなります。
言うが鬼やわ〜。
けど、逆に、言わぬが鬼、ということもあります。
例えば、一緒にいる人の肩に紙切れみたいなゴミがついていたとしましょう。
これは100人中100人が教えてあげると思います。
相手にゴミがついているのを分かっているのに言わないのは、言うなれば「言わぬが鬼」です。
でも、じゃあ鼻毛が出ていたとしたらどうするか?
これはなかなか難しいところです。 ゴミであればすぐに取って、何もなかったかのごとく過ごせますが、 鼻毛が出ているよ、と言われたところでその場でどうすることもできません。
どうすることもできないけど、 あ、俺は今鼻毛が出ているんや、と思いながら過ごさざるを得ません。
だったら、言わない方がよかったことになります。
この場合は「言うが鬼」になります。 この話はもう少し続きます。