アッシの高校時代からの友人に、江本(仮名)という男がいる。
この男がどでかいことをしでかした。
第一話、第二話、第三話はこちら。
大学で離れ離れになり、次第に疎遠になっていったアッシ達であったが、江本が上京し、しかも結婚していたことを知り、高校時代のうまがあったメンバーたちと不定期的な会合を重ねることになる。
そんなある日、江本の口から「嫁が死んだ」との事実が告げられる。それから一年が経ち、アッシ達は江本の家に向かい、マンションのベルを押した。
1年ぶりに会う江本は、1年前と特段変わった様子もなくアッシ達を迎えてくれた。
激痩せしているわけでもなく、激太りしているわけでもなく。ちょっと太った?くらいな感じで。
で、家に上がって、とりあえず亡き奥さんの仏壇の前で手を合わせる。
四人家族を想定して作られたであろうマンションの間取りは、男の一人暮らしにはうら寂しい感じもあったが、リビングのテレビの前に布団を敷き、枕元に漫画を積み上げ、コタツの上には吸い殻の結構溜まった灰皿という、大学生の一人暮らしのようなありふれた生活がそこで営まれている様子が伺えた。
多少散らかっているとはいえ、自暴自棄のそれとは違い、アッシ達の一人暮らししていた部屋と大差ない散らかりようだった。
江本本人はというと、大ごとを飄々といなすフリをするいつもの江本節も健在で、こちらの心配をよそに、その地域のことや今の暮らしぶりについて訥々と話していた。
そして、ひとしきり話すことも話したので、場所を変えてメシを食べに行くことに。
お酒も入り、なんとなく江本とアッシ達の間に存在していた、触れきれない違和感も溶け始めると、さらに江本節が加速し、
妻の最期を揚々と語り出した。
曰く、ディズニーランドのトイレで出てこなくなったら倒れていただの、
そのときのディズニーランドの対応はピカイチだっただの、
一般客からは絶対目につくことのない、救急車両が入ってくる秘密の通路があるだの、
その時の状況を、揚々と話してくれた。
うん、これは確かにいつもの江本だ。決して無理をしているわけではなく、そんな大ごとがあっても俺、冷静かつ客観的やで、ということを誇示するいつもの江本である。
そして、お酒の力も増し、話はだんだん下世話な方へ。
「あっちの方はどうしてんの?」
「お店に行ってる。結構ええで。」
「今度連れてってくれや」
「けど、遠いな」
うんぬんかんぬん・・・
そんな話をながらその日はお開きとなった。
帰り道、アッシ達は、元気そうでよかったなとか、とはいえさみしいやろうなとか、あの仏壇今後どうすんねやろとか、あいつこの先どうするんやろうとか、そんな話をしながら電車に揺られていた。
それ以降は、今まで通り江本も会合に呼ぶようになり、何もなかったかのように会合で顔を合わせるようになっていった。
そしてまた1年、2年と経ったある会合で、江本がとんでもないことを切り出してきた・・・