勝率2割の仕事論(岡康道TUGBOAT)に見る本質をついた広告とは

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広告代理店「電通」を退社し、4名のクリエイターとともにクリエイティブエージェンシー「TUGBOAT」を設立した著者は、電通時代から数々の広告賞を獲得しているスタークリエイターでもある。

ちなみに、クリエイティブエージェンシーとは広告代理店とどう違うのか。広告代理店のメイン事業は広告スペースの代理業。テレビ局や雑誌社、WEBサイト運営会社から広告スペースを買い取り、広告を出稿したい企業に販売して手数料を得る。土地を売買する不動産のビジネスモデルに似ている。

このときに大抵の企業は、広告スペースに出稿する広告表現も広告代理店に依頼する。広告表現に関して広告代理店が得る費用体系はケースバイケースで、実費としてかかる制作費のみを請求する場合(要は広告制作に関しては広告代理店に儲けはない)や、実費の数%~10数%の手数料を請求する場合、実費とは別にフィーを請求する場合などがある。

ちなみに、広告代理店の利益の6割くらいは広告スペースの代理業による手数料となっている。15年くらい前からずっと、もう手数料ビジネスは成り立たなくなると言われながらもしぶとく残り続けている。

で、クリエイティブエージェンシーとは、広告スペースの売買を行わず、広告表現だけを専門で行う会社のことを指す。費用体系はフィーとなることが多い。

で、話を勝率2割の仕事論に戻すと、著者の岡康道氏は広告代理店「電通」で広告表現を作っていたが、そこでの限界を感じ当時のチームメンバーと会社を飛び出し独立、起業した。サラリーマンクリエイターとして、広告主である得意先のサラリーマン担当者の要望に応えることに我慢がならなかったということが切々と書かれている。(本書は口述ということみたいだけど)

得意先のサラリーマン担当者が求めるのは上司に説明しやすい広告、すなわち調査受けする広告だ。広告には、「調査したところ70%の人がいいと言った」という事実が求められる。この場合の調査は、広告としての完成物を調査するのではなく、絵コンテと呼ばれるコマ割漫画の状態での調査となる。

広告作りのプロであるクリエイターですら、絵コンテの状態では想像もしなかった広告ができあがるものなのに、一般の生活者が絵コンテで判断できるはずがない。結局は、徹底的に分かりやすく、明るいものだけが調査で高評価を得る、とのこと。

そんな環境に立ち向かい、得意先のサラリーマン中間管理職が求める上司に説明しやすい広告ではなく、商品の本質や生活者の本質、商品と生活者の関係性における本質をついた、人の心を動かすメッセージ性のある強い広告、印象に残る広告を追い求める著者たちの奮闘記には勇気づけられる。

本質をつくというのは、送り手の都合の良い思いこみを一切排除し、自分の気持ちをごまかさない、自分の気持ちに正直であるということだ。

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